書評「生涯投資家」(村上世彰著)

ちょうどこのブログで、「ピンチをチャンスにする投資」を企画ものとして始めると時を同じくして、タイトルの著作が出版された。

 

村上世彰氏は、かのニッポン放送の株式購入にあたり、ライブドアとの間でインサイダー容疑をかけられてしまい、一旦は投資ファンドの世界から少し離れていた。しかし、最近は元村上ファンド出身者や自身の娘が主導する投資ファンド、自身もこの世界に戻ってきており、黒田電気の件をはじめ、物言う投資家としてのその復活ぶりは目を見張るものがあり、素晴らしく嬉しかった。

 

私も株式投資にあたり、村上氏が提唱するコーポレートガバナンスの強化などは共感するものが多く、また内部留保が過ぎる企業に対して投資したうえで物言う姿勢などは、歯に衣着せぬ言いっぷりで痛快そのものである。

 

かつてはあまりにも投資に対する世間の目が遅れており、ホリエモンと村上氏が悪者として仕立てられた感があったが、今となっては一般投資家でも負けず劣らず大金を企業に投じており、このかつての動きがあったが故のものとして、ようやく追いつき出してきたと感じられる。

 

さて前置きが長くなったが、この著作は何度でも読み直すことができるほど充実したものになっていると評価している。なかでも氏が紹介してほしい3人として、マクドナルドの藤田田氏、西武の堤清二氏、リクルート江副浩正氏を実際に紹介うけたくだり、また東京スタイルへの敵対的買収に至った際の、伊藤氏とのやりとりは氏の熱い思いがよく出ていると感じられた。

 

更には、真に投資家と経営者は分離すべきとは、そのとおりだと思うし、経営者が自身の思い通りに経営したければ、非上場にすべきとはまさしくである。ただ、企業に身を置くものとして、追加するとしたら、非上場足りとても外部の目を入れて経営を健全化しなくては日本の企業競争力は向上しないと思う。

 

また自身の投資基準として、期待値が

1.0を超え、IRRが15%を超えないと実施しないなどが記されている。あと2006年以降の活動が最後に記載されているが、介護のところで触れられていたヒルズ族折口雅博氏も昨年末のテレビ番組で、事業家というよりも投資家として復活を遂げていたことも何かの縁ではないかと思う。

 

現在はシンガポールに移住して、自身の資金で投資し、また娘の会社にアドバイスするなど、相変わらずの活躍ぶりであるが、日本もようやく氏の提唱してきたコーポレートガバナンスへの取り組みも始まってきたことから更なる活躍でメディアを通じて目にすることを期待したい。

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